“世界最強のヘッジファンド”LTCMはなぜ破たんしたのか【中編】

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お疲れ様です、ローンウルフです。

ノーベル経済学賞受賞者擁する、ドリームチームと称されたヘッジファンド、LTCM(ロング・ターム・キャピタル・マネジメント)。前回の記事では、その誕生と華々しい実績について取り上げました。

 

運用開始直後から驚異的なリターンを叩き上げることに成功したロングターム。しかし市場というものは彼らの示す通り合理的な部分があり、次第に他の金融機関も彼らの手法を真似し始めるようになるのでした。

模倣され始めるロングタームの手法

彼らのファンドは徹底した秘密主義を貫き、取引の注文についても細かく分散していたものの、市場の隅々まで目を見張らせていた他の金融機関をごまかすことはできませんでした。

債券のスプレッド(価格差)は少し開いたかと思えばすぐに収縮。債権のスプレッドからリターンを得ることが難しい状況になっていくのでした。

そこで彼らは従来の債券取引から手を広げることになります。その手を広げた先は株式取引です。彼らは株式取引においてもアービトラージ戦略を採用するのでした。

こうした株式取引におけるアービトラージ、特にM&Aを利用したM&Aアービトラージについて、マートンとショールズのノーベル賞コンビは株式取引における知識と経験の乏しさからリスクが高すぎるとして反対。

社内で激論が交わされましたが、結局ジョン・メリウェザー(JM)は昔からのトレーダー仲間の意見を採用し、M&Aアービトラージを開始するのでした。

流動性に乏しい金融商品に手を出し始めるロングターム

また彼らは、自らのモデルを駆使してボラティリティを自分達で算出、実際の市場のボラティリティが、彼らが計算したボラティリティよりも割高な場合に、株式のオプションを売るという「エクイティ・ボラティリティ」という取引を行いました。

プットオプションを売るということはどういうことかというと、いわばロングタームが株価下落に対する保険商品を販売するようなもので、金融機関から手数料をもらう代わりに、もし株価が暴落した際には金融機関には株価の下落分の金額を払い込まなければいけないというものです。

 

※ 非常に単純化しているのであしからず

またこうしたオプション取引で長期の契約を結ぶため、ロングタームは市場を通さずに各金融機関ごとに契約。流動性に乏しい取引にもかかわらず、莫大な金額をオプション取引において売り続けるのでした。

また彼らは同じく流動性の乏しい、ブラジルやロシアなどの新興国市場債券にまで手を伸ばします。こうして手を広げた結果、レバレッジは当初20倍台前半であったのが(この倍率でも十分高いですが)、30倍を超えるまでに膨れ上がります。

マートンやショールズ、マリンズはこうしたポジションを増やしていく姿勢に抗議しますが、トレーダー達は耳を貸すことはありませんでした。

ノーベル経済学賞を受賞した学者が在籍していたことで有名なロングタームですが、彼らの名誉のために付け加えると、破たんの原因になった取引について彼らは反対の姿勢をとっていたのでした。

そしてあろうことか、ロシア債においてはなんとヘッジをかけずに購入していました。もはやアービトラージ取引ですらありません。当初の債券の価格差を利用する取引から、相場の方向性に賭ける取引をロングタームは行うようになるのでした。

運命を決定づけるロシア国債のデフォルト

そんな中、事件が起きます。1998年8月17日、ロシアは国外の国債保有者に対し、債務支払い猶予(モラトリアム)を宣言しました。デフォルト(債務不履行)が起きたのです。

この影響を受け、世界中で株価が急落。質への逃避が起き始めます。ボラティリティは急上昇し、ロングタームが行っていた「エクイティ・ボラティリティ」において莫大な損失が発生します。

「質への逃避」は債権においても起きます。新興国の債券は叩き売られ暴落。代わりにアメリカの国債が買われ始め、価格は急騰。ロングタームの持っていたポジションのスプレッドは急拡大していき、損失はみるみるうちに膨らみます。

ついていないときはついていないことが続くもので、ロングタームが仕掛けていたM&Aアービトラージも合併話が破たん。たったの1日で一億五千万ドルもの損失を負うことになります。

これらの損失により、年初にあった四十六億七千万ドルあった自己資本が、あっという間に二十九億ドルと自己資本の三分の一を失いました。

この自己資本の急激な減少に対応するためロングタームの面々は資金調達に動き始めます。彼らの人脈を生かし、超一流の投資家たちに声をかけます。

 

ソロモン時代から縁があったバフェットに助けを求めるLTCMの面々。しかし…

ウォーレン・バフェット、ジョージ・ソロス…彼らは興味を示したものの、結局資金調達に応じませんでした。

バフェットは金融派生商品(デリバティブ)について「大量破壊兵器」と揶揄しましたが、それは今回の騒動においてデリバティブの恐ろしさについて身に染みていたからではないでしょうか。

その後再度の求めにバフェットは彼らの救済に動こうとするも、最終的には合意に至りませんでしたが、彼らのポジションを二束三文で買い叩こうとするあたりバフェットのしたたかさもうかがえます。

売りが売りを呼び、膨らむ損失。そして…

レバレッジをかけすぎていたロングタームはスプレッドの拡大が起きているにもかかわらず、彼ら自身のポジションの大きさ故、ポジションを解消することが出来ません。彼らの売りが、さらにスプレッドの拡大を生み出すことになるからです。

そんな身動きの取れない彼らを尻目に、同じようなポジションをとっていた他の金融機関は次々と手持ちの資産を売却。ロングタームが保有しているポジションのスプレッドはますます拡大していくのでした。

8月末、彼らの自己資本はたったの一か月で45%を失います。自己資本が少なくなったため、レバレッジは55倍と世界最大級のヘッジファンドとしては尋常ではない規模にまで膨れ上がります。

その後スプレッドの拡大が続くなか、資金調達に動き続けるも失敗。最終的にFRB仲介の元、1998年9月28日、金融機関14社によりロングタームは買収されることになるのでした。

こうしてわずか5年足らずで幕を閉じた、ノーベル経済学賞受賞者とFRB元副議長を擁するヘッジファンド、LTCM。

次回の記事では、彼らがなぜ破たんするに至ってしまったのかについて、検討していきたいと思います。そして破たん後のLTCMについても少し触れたいと思います。

後編へ続く

(参考文献「最強ヘッジファンドLTCMの興亡」)

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