あの「孤高の一匹狼」が再び登場!次の標的は「甘い国」から「辛い国」へ?その身に待ち受ける意外な展開とは

2023年11月15日

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遠い昔、世界のある場所に辛味王国という国があった。その国は国王による専制政治が行われており、その強権により国民には辛味が強制されていた。また辛味に関わるもの以外すべてのものに辛味税が課されており、他の物品の流通を妨げていた。

また辛味王国の軍隊は「デスソース」という強力な辛味の液体を保有していた。他国との戦闘の際、辛味王国の軍隊は他国の兵士の口の中にデスソースを押し込み、ひとたびその液体を口にした兵士は戦闘不能に陥っていた。その強力なデスソースの持つ破壊力は他国を震え上がらせるのであった。

「ここが辛味王国か」

そんな辛味王国の前に一人の男が現れた。あのチョコレート帝国の秘密を暴いた「孤高の一匹狼」、ローンウルフであった。強権的な政治により国家統治が行われ、国民に辛味が強制されているという噂を聞きつけ、辛味王国の秘密を暴こうと潜入を試みるのであった。

「うっ…」

王国に近づいたローンウルフの鼻に刺激臭が飛び込んだ。

「これは噂以上だな…」

町からにじみ出る香辛料の匂いが一瞬ローンウルフの足を止めさせたが、情報収集のため何事もなかったかのように国内にもぐりこんだ。

「これは?!」

王国に入ったローンウルフの目に飛び込んできたのは、街中にある辛味料理を扱った数々の料理店であった。なかでも「蒙古タンメン中本」は街中のいたるところにあり、その真っ赤な外見の店舗は視覚からも刺激を与えるようであった。

街中の様子を調べるため、ローンウルフは蒙古タンメン中本の店舗に入ることとした。店内に入ると、先に店舗に入っていた客が数名いたが客たちはその辛さにより、みな顔を苦痛に歪めていた。

「待っていろ、いずれその苦痛から解放してやるからな」

虐げられている国民のため、その苦痛の源を分析しようとローンウルフも料理を注文することとした。だが…

「何?!」

メニューを見たローンウルフは驚愕した。なんと辛さ5以下の料理がメニュー表に無かったのだ(中本のメニューは辛さの表記が11段階で表示されている)。ここ辛味王国にある蒙古タンメン中本の全ての店舗では、辛さ5以下のメニューが禁止されているのであった。

「ここまで強い辛味が国民に強制されているのか…許せん!」

怒りを覚えたローンウルフは意を決し、店内にあるメニューのうち「五目味噌タンメン」を注文した。中本フリークの間では「ゴモミ」の愛称で知られる定番料理だ。

 

 

その赤みがかったスープは、口に入れる前からその強烈な辛味を約束しているようであった。

「よし、行くぞ!」

ローンウルフは麺の中にその箸を放り込み、そのまま麺を口の中にほうばった。しっかりとした太麺にスープと唐辛子が絡みつき、ローンウルフの舌を襲った。辛さに悶えるローンウルフ。

「くっ…ここは一旦避難だ」

辛みから一時避難するため、野菜に箸を伸ばすローンウルフ。しかし「ゴモミ」はその追撃の手を緩めなかった。

「ぐわっ!!!」

思わずローンウルフは辛さに顔をしかめた。野菜にはスープが染み込んでおり、その辛味がローンウルフの舌を襲ったのだ。

「クソッ、ここまでの攻撃力を持っているとは…だが俺はあのチョコレート帝国皇帝ともわたりあった男だ。そう簡単に負けてたまるか!」

その攻撃力の高さにローンウルフは一瞬ひるんだが、意地とプライドをかけて全力で「ゴモミ」に戦いを挑むのであった。

そして20分後…

 

 

ローンウルフは五目味噌タンメンを完食した。顔中、いや、首周りからも噴き出た汗がその激闘を物語っていた。

激闘を終えたローンウルフ。彼の頭にはある感情が浮かんでいた。

「確かに私はこの強烈な辛味と激闘を繰り広げた。しかし一体なんだ?戦いを終えた後のこの爽快感は」

周りを冷静に見渡してみると、辛さで顔を苦痛に歪めていた人たちは、今となってはむしろその辛味を楽しんでいるように見えた。とその時…

 

「王だ、王が街にやってきたぞ!」

 

「なんだと?!」

 

店外から聞こえる突然の叫びに、驚きを隠せないローンウルフ。

「強権を振るっている王がまさかこんな街のはずれに現れるとは!」

代金を払い、急いで店外に出るローンウルフ。そこにいたのは一目で「王」とわかる風格を携えた一人の男だった。

 

 

 

 

「王だ、すいさく様だ!」

王の登場に、熱狂に沸く国民達。

「バカな…本当に街にやってくるとは…一体何が目的だ?」

疑問に思ったローンウルフを尻目に、熱狂に沸く国民の声に応えるように王は颯爽と国民の輪の中に自らを投じていった。


 

 

 


 

国民の輪の中に入った王は国民の辛味に賛同する声を丹念に拾い上げ、広く国民全体にその声を届けるのであった。

「これは一体どういうことだ・・・?辛味王国の国王は強権的な政治手法を国民に行使して辛味を強制していたのではなかったのか?」

混乱してしばしその場で呆然と立ち尽くすローンウルフに、隣にいた男が話しかけた。

「アンタ何言ってるんだい?たしかにこの国は辛味であふれているが、それは国民自らが望んだことなんだ。それにこの国では入国も出国も自由だ。だから本当に辛味が好きな人が集まってるんだ」

その男の言葉に、状況を理解したローンウルフ。

「そうだったのか・・・俺はてっきり辛味は国王が国民に強制していたとばかり思っていた。だがこの国は本当に辛味が好きな人間が集まり、その辛味を楽しむような国家体制が敷かれていたのだな」

辛味王国の秘密を暴こうと王国に潜入したローンウルフ。しかしそこで判明した事実は、辛味を愛し、辛味を愛する国民を愛する王の心優しき姿だった。

これなら俺のいる場所はないな、と心の中でつぶやき、辛味王国を後にするローンウルフであった。

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