私が生活保護受給者に殺されかけた時の話【前編】

2023年11月15日

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お疲れ様です、ローンウルフです。

私は今現在は個人事業主として活動しているものの、今年の7月初めまでは地方公務員として某自治体で働いていました。

 

地方公務員としての最後の業務として私は生活保護の担当をしており、ケースワーカーの仕事をしていました。ケースワーカーとは、生活保護受給者が自立した生活を送るため、彼らを支援する業務を担う職員のことです。

今回の記事では、私が地方自治体職員を退職する遠因となった、ある事件について語りたいと思います。文量が長くなってしまうので前後編の2回に分けてお話させていただきます。

なお個人情報の関係で実態と一部内容を変えています事ご了承ください。

1年ほど前に私の身に起きたある事件

ちょうど今から1年ほど前、私はある生活保護受給者の家へ訪問する約束をしていました。生活保護の廃止に関して、事実確認と説明をしに行くためです。

生活保護受給者は一定程度の金額までは預貯金をすることが許されています。その一定の金額というのは、生活保護受給者が憲法25条にある「健康で文化的な最低限度の生活」を営むのに必要な金額の半年分の金額です(具体的な算定方法は厚生労働省の通達等によって定まっています)。

その受給者は最低生活費の半年分を大幅に超過する預貯金を有していたため、生活保護の廃止の手続きに入らなくてはいけない状態でした。

ただし超過したからといってただちに生活保護が廃止になるわけではなく、大型家電を買い替えるなど近々大きな出費があるといった事情がある場合には、自立に関する計画書を提出させて経過を観察するなどといった措置が取られるため、本人に事情を確認しなくてはいけません。

また生活保護が廃止にするという本人の身分にとって大きく影響が出てくることについて、電話だけで終わらせるわけにはいきませんから、本人と直接会って事情を聞くのが一般的です。

本人には自宅へ訪問する前に、預貯金が過大であり生活保護が廃止になる可能性が高いという旨はあらかじめ話していました。私は自宅へ訪問する約束を取り付けるため、本人へ電話を掛けました。

「生活保護の廃止について簡単にご説明と事実確認をしたいと思いますので、近日中にお宅を訪問させていただきたいと思います」

そう話した私に男はぶしつけにこう言いました。

「アンタらにとっちゃ簡単な話かもしれないけどな」

生活保護の廃止の受け止め方については、自立が出来て嬉しいという人と、生活に悪影響が出るから困るという人に分かれるのですが、話をする限りこの人は後者の人のようでした。

ただし最初に生活保護の廃止について話した時はあまり大きな反発もなかったため、訪問に際してはあまり大きなトラブルなく終われるのではないかとこの時は思っていました。

私は訪問前にその人の親族や通院の状況、支援者の有無等の情報を確認しました。その受給者は男性で、高齢者に差し掛かろうかという年齢で一人暮らし。親族に暴力団関係者がいるものの記録を見る限り本人自体は過去に大きな問題は起こした形跡はありませんでした。

そして訪問当日

そして当日、私は受給者の自宅へ向かいました。訪問は自転車を利用して行うことが多いのですが、その日はたまたま本庁の原動機付自転車が空いていたので、バイクを使って自宅へ訪問することとしました。

アパートの駐輪場にバイクを止め、男の部屋の中に入ります。男の部屋はワンルーム。部屋の中の電気はつけていなかったものの、時間帯は昼間で天気も良かったため部屋の中は比較的明るい状態でした。

部屋の中にあまり物はなく、きれいな状態でした。過去にも1度自宅へ入ったことがあったのですがその時とほとんど同じ状態でした。

そして私が部屋に入るなり、男は激昂してこう叫びました。

 

「生活保護が廃止になるってどういうことだ!」

 

自分が想定していた以上に感情が高ぶっていたため少し驚きましたが、大声でこちらに怒鳴り散らしてくるということは生活保護の仕事上比較的よくあることなので、私は落ち着いてこう答えました。

「〇〇さんの預貯金が生活保護法の規定で決まっている半年分の最低生活費を超えてしまっているんです」

男は再び大声で叫びました。

「そんなの聞いてないぞ!前の担当からは貯金して問題ないって聞いたぞ!」

「前の担当は〇〇と言っていたのに!」と相手が主張してくるのはよくある話です。ただ誰が何を言ったか言っていないかの話をしてしまうと水掛け論になってしまうため、私はこう言いました。

「前の担当が何をどう話していたかはわかりませんが、最低生活費の半年分までの金額の預貯金は生活保護制度上認められているんですが、現状〇〇さんの預貯金はそれを超えてしまっているので、生活保護が廃止になる可能性が高いんです」

男は私の言葉に納得したようには見えませんでしたが、黙ったまましかめっ面で部屋の中をウロウロとし始めました。

私は聞き取った内容をメモするため、持ってきたカバンの中からメモを取り出したあと部屋の真ん中に座りました。

本人にそもそもの預貯金の積みあがった経緯を確認したところ、生活費を切り詰めてその金額になったとのことでした。その受給者は加算額がついていたので、時間をかければそれだけの金額が積みあがることも確かに不可能ではありませんでした。

そして先ほどもお話した通り、預貯金が最低生活費の半年分を超えたからといって直ちに生活保護が廃止になるわけではなく、お金を貯めた事情や使い道次第では必ずしも廃止になるわけではありません。お金を貯めた理由を聞くため、私は男にこう尋ねました。

「預貯金が最低生活費の半年分を上回ったからといってただちに生活保護が廃止になるわけではなくて、何か大きな出費があったり自立に使うために貯めたのであれば生活保護が継続できるかもしれません。近々何か多額のお金を使う予定はありますか?」

私の質問に男はこう答えました。

「スーツを買おうとしてたんだ!」

間髪入れずに私はこう話しました。

「スーツだったら1着数万円で買えますね。何十万円もスーツ代には使いませんよね?」

話を聞く限りどうやら近いうちに大きな出費はなさそうでした。そうなると生活保護は継続できません。その旨を伝えると、男は過去のことについて話し始めました。

「前に生活保護費が減らされたことがあった!お前らがちょろまかしたんだろうが!」

実は過去に男のアパートの家賃の改定があった時に当時の担当がそれをすぐには保護費に反映させず、保護費を過払いしてしまったことがありました。

残念ながらこれは福祉事務所側の事務処理の遅れが原因です。事務処理の遅れが原因とはいえ、正しい金額に保護費を調整しなくてはいけません。

保護費の過払いから2か月以内であれば、将来支給される保護費から減額して正しい金額に直すことが出来るためその調整を行っていましたが、それが原因で翌月の保護費が一時的に減らされてしまいます。男は元々の性格とその時の出来事が相まって役所側に不信感を抱いていたのでした。

私は当時の担当の対応について謝罪すると同時に、不正な行為は否定しました。

「そのことについては大変申し訳ございませんでした。ただ不正をしてお金を得たということはありませんし、手続上することも出来ません」

こう話したものの、男は落ち着くどころかますますヒートアップしているようでした。男の興奮ぶりを見た私は本当は今すぐにでも部屋を出たかったのですが、生活保護が廃止になった後の手続き等について説明しなくてはなりません。

なぜなら生活保護が廃止になった後の国民健康保険への再加入、預貯金を使い果たして生活が困窮した場合に生活保護を再度申請をすることが出来るなど、こうした説明が不足した状態で生活保護を廃止にしてしまうと、万が一後々生活保護の廃止について不服申し立てや裁判で争われた場合に、生活保護の廃止が取り消されてしまう恐れがあるのです。

一般には馴染みが薄いですが、憲法25条の規定とはそれほどまでに強力なのです。

「預貯金が一定の金額以下になればまた再度生活保護は受けられますよ」

私の説明の後、男は怒鳴り声でこう質問してきました。

「預貯金の金額がいくらになったらまた生活保護を受けられるんだ!」

大声を張り上げられた時にこちらが弱気な姿勢を見せてしまうと、怒鳴ればなんとかなると思われてしまいかねないため、私は相手の態度とは対照的に淡々とこう回答しました。

 

「〇〇さんの場合は少なくとも15万円は切らないと難しいですね」

 

「ふざけんな!」

 

男は外に聞こえるんじゃないかというぐらいの大声を上げました。そして鬼のような形相で座っている私に近づいてきました。近づきすぎたせいで男の足は座っている私の体に当たっており、今にもその足で私のことを蹴り飛ばしてきそうでした。

 

「出てけ!」

 

男は叫びます。さすがに身の危険を感じはじめた私はメモをバッグの中にしまい、立ち上がってこう言いました。

 

「生活保護の廃止が正式に決まったら電話で連絡します」

 

「うるせぇ、電話してくんじゃねえ!」

 

私の言葉に男は最後まで激昂していました。それでも私は福祉事務所に戻って法律上の手続きをするだけです。

「それでは失礼いたします。」

こういって私は男を背にして部屋を後にし、玄関へ向かいました。

(やっとこの空間から解放されるな)

少しほっとした私は玄関に腰掛け、靴を片方履き、もう片方の靴も履こうとしました。

 

 

しかしその時・・・

 

 

後ろの方から男の大きな叫び声が聞こえました・・・

 

 

 

 

「殺してやりてえ!!!」

 

 

後編に続く

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