生活保護費の不正受給を暴く!課税調査っていったい何?

2023年11月15日

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お疲れ様です、ローンウルフです。

以前の記事で生活保護の不正受給について取り上げましたが、こうした不正受給を暴く手段として、福祉事務所は年に1度「課税調査」を行うということを記事にしました。生活保護費の不正受給について詳しく知りたい方は、下記の記事をご覧になってください。

 

今回の記事ではこの課税調査に焦点を当てたいと思います。

課税調査とは一体どんな調査なのか

改めて課税調査について説明しますと、課税調査とは、生活保護法第29条に基づき、福祉事務所が所属する自治体の課税情報を調べ上げ、本人がちゃんと収入を福祉事務所に申告しているかどうか確認する作業のことを言います。

各市区町村の課税担当課には会社等の事業所から届く給与の収入情報、税務署に提出された確定申告書、年金の支払先から届く年金の収入情報が集められています。この課税担当課が持っている収入情報と、福祉事務所が持っている生活保護受給者の収入の情報を突き合わせることにより、生活保護受給者が福祉事務所に申告していない収入があるかどうかを調べ上げるのです。

ちなみに課税調査を行う時期ですが、課税担当課が賦課決定(課税・非課税を確定させる行為)を行うのが6月の上旬ぐらいになるので、おおよそ6月下旬から7月上旬にかけて課税調査を行うことになります。この課税調査により不正受給のおよそ9割が判明することになります。

申告していない収入が課税調査で判明したらどうなる?

課税調査で福祉事務所に申告していない収入があることが判明した場合、その収入は特殊な事情がない限り原則不正受給扱いとなります。不正受給と判断された場合、当然その分の金額を福祉事務所に返還、もしくは今後支払われる保護費から徴収することになりますが、その際に以下のペナルティが発生します。

1 働いて得た収入の場合、基礎控除が適用されなくなる

生活保護費を計算するにあたっては、生活保護受給者が働いて得た収入は生活保護費から差し引くこととなりますが、その収入金額全額が差し引かれるわけではありません。働いて得た収入のうち、経費や基礎控除額を引いて残った金額が生活保護費から差し引かれることとなります。

例えばひと月に4万円の就労収入を得た人がいて交通費が5千円かかっていた場合、以下の計算式により算出された金額が生活保護費から差し引かれることとなります。

この上の計算式によって導かれた17,400円という金額が実際に生活保護費から差し引かれる金額となるのです。なおこの基礎控除は働いて得た収入にだけ自動的に適用され、収入金額によって適用額は上下しますが、年金等の不労収入には適用されません。

しかし課税調査でこの就労収入が判明して不正受給と認定された場合、この基礎控除が適用されなくなるため、本来であれば保護費から差し引かれずに済んだ金額が丸々福祉事務所から徴収されることとなります。上記の例で言うと、40,000円から交通費5,000円のみを差し引いた35,000円が徴収の対象額となります。

2 経費は必要最小限しか認められなくなる

通常の手続きできちんと福祉事務所へ就労収入を申告する場合には、収入を得るためにかかった必要経費を計上することが出来ます。しかし不正受給として扱われた収入の場合、所得税、交通費等の必要最小限の金額しか経費として認められなくなります。

例えば音楽の講師として活動している人がその収入を得るために楽器や楽譜を購入した場合、その楽器や楽譜の購入代はきちんと申告していれば経費として認められますが、不正受給扱いとなった場合には経費として認められません。

3 自己破産しても不正受給による徴収額は免責されない

生活保護法第63条による返還決定の場合、生活保護受給者が自己破産すると福祉事務所に対して本来返還すべきであった金額について、免責されて返還をする必要がなくなります。しかし不正受給の場合、たとえ自己破産したとしても不正受給した金額については、そのまま自治体に対して返還義務は残ったままとなります。

4 徴収金の上乗せ、刑事告発を受ける可能性がある

不正受給をはたらいた場合、不正受給して得た保護費に加え、その保護費の40%以内の金額を上乗せして徴収される可能性があります(生活保護法第78条)。また悪質な事例の場合、刑事告発を受ける可能性があります。刑が確定した場合、3年以下の懲役または100万円以下の罰金が科されることとなります(生活保護法第85条)。

しかし不正受給をはたらいたからといって、必ずしも徴収金の上乗せや刑事告発を受けるわけではありません。不正受給を働いた世帯の世帯状況、健康状態、精神状態、不正受給を福祉事務所が把握した後の福祉事務所の調査に協力的かどうか、金額の多寡、事例の悪質性等、様々な点を考慮して福祉事務所が判断することとなります。明確な基準が定まっているわけでもありません。

例えば課税調査で一番多く判明するのが、受給者の子供がアルバイトをしている事例です。親に黙って子供がアルバイトをしていたような事例の場合、徴収金の上乗せや刑事告発をするということはまずないと思います。


ちょっと文章が長くなってしまったので、不正受給をした際のペナルティについてまとめて再掲したいとおもいます。

1.働いて得た収入の場合、基礎控除が適用されなくなる

2.経費は必要最小限しか認められなくなる

3.自己破産しても不正受給による徴収額は免責されない

4.徴収金の上乗せ、刑事告発を受ける可能性がある

「給料もらって申告せずに半年たったけど福祉事務所にバレてない、余裕じゃんw」と思ったあなた、甘いですよ

以上、課税調査について現役のケースワーカーが解説いたしました。この課税調査は所得情報がかたまってから行われるため、収入を得た時期とタイムラグが発生します。

例えば平成29年6月に給与収入を得た人がいてそれを意図的に隠して福祉事務所にその収入が半年間気付かれていない人がいたとします。

「福祉事務所に収入申告せずに半年たってもバレてない、余裕じゃんw」

と思ったあなた、甘すぎます。

この例の場合、平成29年の収入情報は翌年の平成30年6月に入ってから課税情報が固まるため、収入を得て1年以上たってから福祉事務所がその収入を把握することとなります。

もちろんこの課税調査だけに限らず、我々ケースワーカーは怪しい点があれば別途個別に金融機関や会社を調査します。やすやすと不正受給できると思わないでくださいね(^^)

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