生活保護受給者に支給されるエアコンの購入費用をパチンコ代に使うことは事実上できない

2023年11月15日

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お疲れ様です、ローンウルフです。

先日厚生労働省の通知に基づき、平成30年4月1日以降に一定の条件に当てはまる方に対し、エアコン等の冷房器具の購入費用が5万円まで支給されることが決定しました。詳細は過去に記事にしているのでよければご覧ください。

 

私がいる自治体でもエアコンの購入費用を支給するという話がチラホラ聞かれ始めました。そうした中で、私がインターネットの掲示板等の情報を検索していた所、この決定のニュースを見た方々の書き込みに

「エアコンの購入費用を支給してもパチンコ代に使われたらどうするんだ!」

「エアコンは現物支給にした方がいい」

といった意見が散見されました。これらの意見に対して、実際のところはどうなっているのかを現役のケースワーカーである私ローンウルフが解説したいと思います。

エアコンを現物給付することは可能である

生活保護費の支給の話の中で、決まってといいほど出てくるのは現物支給の話です。今回のエアコンの購入費用については生活保護法の規定上はどう取り扱われているのでしょうか?具体的な取り扱いは厚生労働省の「生活保護法による保護の実施要領について」という局長通知によって下記の通り定められています(第7-2(6)エ)。

アからウまでの場合においては、収入充当順位にかかわりなく、現物給付の方法によること。ただし、現物給付の方法によることが適当でないと認められるときは、金銭給付の方法によっても差し支えないこと。(ローンウルフ注…ウの場合が冷房器具にあたります)

現物給付といっても、福祉事務所がエアコンを直接購入して保護受給者の方々に配るというわけではありません。あくまで契約は保護受給者が販売店としてもらい、代金の請求先を自治体にしてもらうという話です。

現物給付によってエアコンを設置すれば保護受給者の元に現金は入らないため、エアコンの購入代がパチンコ代に回るということはありません。ですが実際問題として、購入費用について現物給付ではなく金銭給付によって行われる事例も出てくると思います。

例えば家電量販店でエアコンを購入した場合、自治体に代金を請求してもらうためにはその自治体の会計のルールに従ってもらう必要があります。このあたり自治体によって異なってくると思いますが、例えば請求書には代表者印を押してもらう、自治体に契約当事者として登録をしてもらうなどが必要になってくる場合があります。代金の振り込みにも通常2~4週間はかかってしまうため、購入と同時に現金を引き渡すことは出来ません。

そうした手間がかかってしまうことから、販売店が代金を購入者ではなく自治体へ直接請求することを断る可能性があります。またそもそもエアコンの購入費用の支給は5万円が限度額であるため(設置費用は除く)、5万円を超えた請求の場合には全額を直接販売店に支払うことが出来ません。

したがってエアコンの購入費用については、全てが現物給付によって行われるとは限りません。その場合、保護受給者に直接金銭給付を行うこととなります。

万が一エアコンの購入費用を別の目的に使ったとしても、その分の金額は将来支払われる保護費から返還される

金銭給付を行う場合、現金の支給方法は後払いと前払いの2種類があります。後払いの場合は受給者がエアコンを購入してその領収書を持参し、その領収書を基にエアコンの購入費用を支給するという方法がとられますが、エアコンの購入と設置にはかなりの金額がかかるため、このような購入費用を後払いするという事例はめったに出ないと思われます。

次に前払いについてですが、受給者が販売店に行って見積もりを取ってもらい、その見積書に基づいてエアコンの購入費用を福祉事務所が本人に支給することになります。そしてエアコンの購入費用を支払った際の領収書を福祉事務所に提出してもらい、後日行われる訪問の際にエアコンの設置状況を確認することにより、問題なくエアコンの購入費用として支給されたお金がエアコンの購入に使われているかどうかを確認します。

でも万が一エアコンの購入費用として前払いしたお金を、受給者がパチンコ代に限らず別のことに使ってしまった場合、その使ってしまったお金はどうなるのでしょうか?

エアコンの事例で考えた場合、受給者には「家具什器費」という名目でお金を支給し、受給者にはそのお金をエアコンの購入費用以外の目的に使うことが禁止されています。もしエアコン代以外に使われてしまった場合、その分の金額は全額市へ返還することとなります。手持ちのお金があればその手持ちのお金の中から、残っていないのであれば今後支払われる生活保護費から返還をしてもらうことになります。

ですので、一時的にはパチンコ代に回せるかもしれませんが、結局その分の金額は全額市に返還しなくてはならないため、事実上エアコン代をパチンコ代に使うことはできない仕組みになっているのです。

生活保護費をパチンコ代に回す人は言われているほど多くない、というかほとんど聞いたことがない

インターネット上で「エアコン代がパチンコに使われるんじゃないか」という意見がとても多かったので記事にしてみました。というか生活保護費をパチンコ代等のギャンブルに使う人って実は極めて少ないと思います。

私が受け持っている130超の世帯の中ではそうした話は聞いたことがないし、他のケースワーカーからも話としては数件聞いたことがある程度です。ちなみに私がいる自治体にもパチンコ屋は複数あるし、近隣自治体にもパチンコ屋はあるのでパチンコ屋に行こうと思えばすぐに行ける環境にはあります。

もちろん隠れてやっていればわからないかもしれませんが、少なくともギャンブルで浪費して生活費が足りなくて困ってる!という話は私が知る限り聞いたことはありません(まぁまだ1年4か月しか生活保護業務は担当していませんが)。

生活保護費=パチンコ代に使われるという図式はテレビやインターネットの掲示板の影響などで広まってしまっているのかもしれませんが、感情をあおるような内容なので実態と乖離した情報が広く伝わっていってしまっているのが現状ではないでしょうか?

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