“世界最強のヘッジファンド”LTCMはなぜ破たんしたのか【後編】

2023年11月15日

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お疲れ様です、ローンウルフです。

「ドリームチーム」と呼ばれ、その名声をほしいままにした世界最強のヘッジファンド、LTCM(ロング・ターム・キャピタル・マネジメント)。しかしノーベル経済学賞受賞者を擁しながら、わずか5年ほどで破たんしてしまいました。

その破たんしていく様を2回にわたって記事にしてきました。

 

今回の記事では、ロングタームが破たんした原因について探っていきたいと思います。

ロングタームが破たんするに至った3つの原因

ロングタームが破たんした原因について、私は以下の3つが原因なのではないかと考えました。

1 高すぎるレバレッジ
2 自分の土俵から出てしまった
3 心理的要因の軽視

以下一つずつ見ていきたいと思います。

1 高すぎるレバレッジ
ロングタームはその設立当初から20倍を超えるレバレッジで取引をし、ロシア財政危機が起こる直前には30倍を超えるレバレッジをかけていました。いくらリスクが低いと見ていたアービトラージ取引とはいえ、これだけ高いレバレッジをかけてしまうと、それが逆回転した時に一気に損失を負いかねません。

実際にロングタームはわずか1か月半で破たんに見舞われてしまいました。どんなに安全と思われる取引でも何が起こるかわかりません。事が起きたときに壊滅的な損失を負うほどのレバレッジはかけてはならないと思います。

2 自分の土俵から出てしまった
元々ソロモン・ブラザーズにて行っていたアービトラージ取引は債券取引であり、ロングタームを結成してからもしばらくは債券、しかも流動性の高い債券を中心に取引を行っていました。

しかしスプレッドが縮まるにつれ、ロングタームは流動性の高い債券以外の新興国の債券にも手を出していくことになります。新興国の債券は流動性に乏しく(流動性は金融危機時における非常に重要な要素です)、いざ売りたい時に売ることが難しくなります。売れたとしても望み通りの価格で売ることはできません。

また株式のアービトラージ取引にも手を出し始めました。彼らの優位性は債券取引にあり、門外漢であった株式取引に手を出したのが彼らのファンドの寿命を縮めることにもなるのでした。

3 心理的要因の軽視
ロングタームが用いたモデルにおいて、人々は経済的に合理的に動くものであると想定されていました。しかし実際の人間は感情の生き物です。パニックになれば、とにかく手持ちの証券を現金に換えるために一斉に売りに走り始めます。

彼らの目から見たら売りに走る面々はさぞかし非合理的に見えたことでしょう。しかし、人は非合理的な感情で動く生き物なのです。それを彼らは見誤っていたのでした。

ロングタームの破綻劇から学べるもの

このロングタームの破綻劇で、我々が学べるものはあるのでしょうか?あるとすれば、先ほど挙げた彼らの破綻の原因となった3つの理由について、同じ行動を取らなければいいということです。

1つ目の高いレバレッジについては、そもそもレバレッジをかけた取引を行わない、もし取引を行うにしても相場が乱高下する可能性を想定して低いレバレッジに抑えること。

レバレッジは利益を何倍にもする魔法のようなものです。しかしそれが逆回転してしまった場合、その魔法は損失としてあなたの身に降りかかります。

流動性やボラティリティの高低によってある程度レバレッジに差はありますが、ちょっとの値動きで大きな損失を負うことになる高いレバレッジはむやみにかけないほうがいいと思います。

2つ目について、自分の得意分野に出来る限り集中し、むやみに投資対象を広げずにターゲットを絞ること。

投資先はできる限り自分の手に負える範囲の投資先にとどめるべきです。自分が不得意、あるいはよく知らない分野への安易な投資は控えるべきだと思います。

3つ目の心理的要因について、自分がポートフォリオを組むにあたっては心理的な要因を考慮し、売買ルールを機械的に決め、それを徹底すること。

感情を排するためには、機械的な判断基準を定めたルールを構築し、それを徹底して守ることにより感情を排した取引ができると思います。

この3つを守るだけで、資産に壊滅的な打撃を負う可能性は非常に低くなると思います。

LTCMのその後

さて最後に、ロングタームの破綻後について少し触れたいと思います。

ロングタームの破綻後、FRBは二度の利下げを実施。保有していた債権のスプレッドはようやく縮み始めます。そして銀行団へ36億5千万ドルを返済、2000年初頭にロングタームは清算されました。

それでもジョン・メリウェザー(JM)たちは新たなる道を歩み始めました。清算の直前の1999年末、JMは再びかつてのトレーダー仲間たちを集め(マートンとショールズは含まれていません)、新たなファンド「JWMパートナーズ」を立ち上げました。

JWMパートナーズのレバレッジは15倍以下と上限を決め、新たに極端な状況にどれだけ耐えられるかを確認するための「リスク管理システム」を採用するとしていました。

しかしリーマンショックでファンドは44%の損失を計上。JWMパートナーズは2009年7月に閉鎖されてしまいます。彼らは一度目の破綻の経験を活かすことが出来ず、歴史は繰り返されるのでした。

終わり(参考文献「最強ヘッジファンドLTCMの興亡」)

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