過小評価される「実現しなかった未来」
お疲れ様です、ローンウルフです。
今年に入ってからアメリカの株式市場は大きく上昇しています。S&P500は昨年末の2506.85から今年2019年11月27日の3,140.52までで25.28%もの株価上昇を見せています。
上昇相場時においては、ディフェンシブな戦略よりも景気敏感銘柄に投資する方が高いリターンを上げやすいということについて、ご存知の方は多いかと思います。
こうした結果だけを見て、「ディフェンシブな戦略なんて市場平均を下回るクソダサい戦略じゃんwww」と思う方もいるかもしれません。
しかしこうした意見は「実現しなかった未来」を過小評価しているだけであると私は考えています。
自動車の任意保険料を「損」と考える人は少ないはず
車を保有している方のほとんどは自賠責保険以外に任意保険に加入しているかと思います。こうした任意保険に加入するのは、通常は事故を起こした際の損害賠償金等が莫大になってしまうため、その賠償リスクを回避するためです。当然ながら事故を起こさなければ保険金が下りないため、出費だけを見れば保険料の払い損となります。
しかしこのことに対して「保険料が払い損じゃないか!任意保険になんか入らなきゃよかった!」なんて言う人はほとんどいませんよね?(ごく一部にいそうですが)
これは実現しなかった「事故を起こすという未来」を保険加入者が重視しているからです。事故を起こして人を死なせてしまった場合には下手したら億単位の賠償金を負担することになるわけですから、事故を起こした時のことを重視するのは当然ですよね。
しかしこれを投資に置き換えた場合、「株価が暴落する」というもう1つの「実現しなかった未来」がなぜか過小評価されてしまいます。
上げ相場においてはディフェンシブな戦略は市場平均を下回りやすいのですが、投資の場合は自動車保険と違い、今の好調な相場環境だけを見て
「守りを重視した戦略なんて市場平均を下回るクソダサい戦略じゃないか!市場平均に負けるなら他の戦略をとったほうがいいに決まってる!」
という意見が通りやすいのです。ディフェンシブな戦略は株価下落に対する保険の役割を果たしているのにも関わらず、です。
これは他の人が自分たちよりも儲けているのを見続けるのが耐え切れない、もしくはそうしたディフェンシブな戦略をとっている人間を見て、今の相場の流れだけを見て相場の流れに乗って儲かっている自分は正しいのだと思いこむという人間心理が働いているのではないかと思っています。
ディフェンシブ戦略を採用しているからといって市場平均を上回ることをあきらめているわけではない
とはいえ私がディフェンシブな戦略をとっているからとって、市場平均を上回ることをあきらめているわけではありません。
過去の記事においても、市場が平穏な時は市場平均と同等かそれに近い成績を収めながら、株価暴落時に相対的に良いパフォーマンスを上げることにより市場平均を上回ろうとするハワード・マークスの戦略を紹介しました。
基本的には私もこの立場でいますが、現状は市場平均よりも大きく下回っている状態が続いています。それでもリーマンショック時に大きく市場平均を上回ったおかげで良好なパフォーマンスを上げてきたという過去の実績もあります。
ただもしかしたらこの先30年間、株価の暴落局面が訪れない可能性は0ではありません。その際は30年後は市場平均を下回った成績に終わる可能性が高いでしょう。
ですが私はそれでもいいと思っています。だって結果的には30年後には市場平均に届かないまでも、右肩上がりの相場の中で着実な資産形成が行えているわけですからね。
先ほどの車の任意保険を例にとれば、保険は使われなかったものの事故を起こさずに済めばそれはそれでむしろ好ましいことでしょう。
我々は特定の誰かの投資成績を上回るために資産運用をするわけではないということを忘れてはいけません(ごく一部にいそうですが)。
通常は株価の暴落は恐ろしいものととらえられ、あなたの精神状態を大きくむしばみます。ですが事前の備えをすることにより、株価の暴落を怖がるよりむしろ味方につけるという戦略が、長期的な資産形成において必要なのではないかと私ローンウルフは考えています。