私が生活保護受給者に殺されかけた時の話【後編】

2023年11月15日

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お疲れ様です、ローンウルフです。

前回の話の続きです。

地方自治体の生活保護業務担当者であるケースワーカーとして、生活保護の廃止について話をするため生活保護受給者のお宅へ訪問した私ローンウルフ。

自宅で受給者に生活保護の廃止について事実の確認と廃止となる旨について話をするも、男は激昂。そんな中でもなんとか最低限の事実確認と廃止に関しての説明を終え、私は玄関に向かい靴を履き始めました。

その途中、部屋の中から男の大きな叫び声が聞こえました。

 

「殺してやりてえ!!!」

 

叫び声が聞こえたと同時に、男は足音をドンドンと鳴らしながらこちらに近づいてきました。

私は男が近づいてきたのがわかったと同時に、とっさにキッチンの方に目を向けました。包丁やナイフといった刃物があるかどうかを確認したのです。

キッチンに刃物がないのを確認した私は、「とりあえず刺されることはないな」とこんな場面なのに少しだけ安心してしまいました。

危険な場面でなぜこのような思考回路に至ったのかは自分自身今でもよくわかりません。

しかしその考えが甘かったことを直後に思い知らされます。

 

「っ・・・!!!」

 

男は近づくなり座っている私に向かって両腕を伸ばし、その手で私の首を絞め付けてきました。その握力は力強いものでした。

弱視の影響か意図的かはわかりませんが、幸いにも締め付けられた箇所が首の中心部よりも少し下の部分であったため、そこまで苦しい状態には陥りませんでした。

私は自分の両手で男の手を払いのけ、すぐに左手で荷物を持って右手で玄関のドアのレバーを掴みます。

(これで逃げられる・・・!!!)

そう思ってレバーをおろしてドアを外に押し出します。しかし・・・

 

ドンッ!!!

 

ドアは大きな音を立てるだけで扉は開きませんでした。

 

(・・・しまった!!!)

実は私は男の家に入るときに玄関のドアの鍵を閉めて家の中に入っていたのです。とっさの場面であったため、私はそのことを忘れて鍵をかけたままの状態でドアのレバーを回していたのでした。

そうこうしているうちに再び男の両手が私の首を掴んできました。私は首元の手を振り払い男をはねのけ、急いでドアの鍵を解錠しました。そして荷物を手に取り再びドアのレバーを回します。

今度はドアが開き、外に出ることに成功します。そしてドアを足で勢いよく蹴飛ばし、扉を閉めました。

扉は閉まったままで、男は外までは追ってきませんでした。私は落ち着きを取り戻し、靴をしっかりと履き直したあと、バイクに乗って福祉事務所へ戻りました。

その道中、怒り、恐怖、悲しみ、安堵、くやしさ・・・色々な感情が入り混じったような、経験したことのない感情に襲われ、私は涙を流しながらバイクを運転しました。

上司から投げつけられた思いもしなかった言葉

どうにか福祉事務所へ戻った私。すぐに事の経緯を直属の上司へ知らせに行きました。起きた出来事の概要は話せたものの、私もまだ少し気が動転していたため、詳細については翌日に話をすることとしました。

そして翌日。日中は窓口と電話の対応に追われるため、勤務時間外に昨日の出来事について上司に話をしにいきました。時間外になっても多くの同僚は残業をしていたため、私と直属の上司とのやり取りは課内に筒抜けとなります。ですがそんなことは構っていられません。

資料として上司にその男のこれまでの生活状況や親族の状況が書かれた記録を渡し、上司はそれに簡単に目を通します。

そして改めて昨日の出来事について詳しく話をし、男に首を絞められるということがあったものの生活保護の廃止の手続き上確認すべきことを確認し、説明すべきことは説明した旨について話をしました。

そんな私に向けた上司の言葉は思いもよらぬものでした。

 

「男に首を絞められたっていう話だけど、君の発言が原因で相手を怒らせたりしたんじゃないの?」

 

・・・愕然としました。それが昨日首を絞められて殺されそうになった人間に対して向ける言葉なんでしょうか?女性職員だったら死んでたかもしれないんですよ?

そしてさらに上司は私に向かってこう問いかけます。

 

「親族に暴力団関係者がいるみたいだけど、そういったところから事前にこの人が危害を加えてきそうっていうのはわからなかったの?」

私は事前に入念に男の過去の記録を見た上で訪問しました。その記録からは本人の粗暴性を疑わせる記述はありませんでした(ちなみに記録には書いていなかったものの、男が粗暴であるということはそれなりに知られていたようでした)。

私は怒りと悔しさで目に涙をためたままこう言いました。

 

「そんなのわかるわけないじゃないですか・・・!!!」

 

上司は私が渡した男の記録を少し時間をかけて再び読み始めます。そして私の言葉に納得したのか、こう言いました。

「まぁ、確かにこの記録を見ても本人が粗暴かどうかまではわからないね」

なんとか理解してくれたものの、私の怒りは収まりませんでした。そんな私の様子を見てさすがにまずいと思ったのか、

「わかった、また明日以降具体的に生活保護の廃止についての手続きを進めていこう。俺も協力するから」

と言って上司は私を自席に戻るよう促しました。

後日談

そして翌日以降、私は男の生活保護の廃止手続きをちゃくちゃくと行いました。男には支援者がいたため、その支援者に男の生活保護が近日中に廃止になるので、その後の国民健康保険の再加入手続き等について支援してほしいとお願いをしました。

本人には廃止が決まったら電話連絡をすると言ったものの、あんなことがあった後で電話するのは心理的な抵抗があったため、上司の了承のもと生活保護の廃止決定通知書とともに今後すべき手続きを記載した手紙を同封し、正式に生活保護の廃止手続きが完了するのでした。

なお後日わかったことですが、直属の上司からの私への質問はどうやら私に後にパワハラをしてくることになる隣の係の上司に言わされていたようでした。

私の直属の上司はケースワーカーの経験がなく、また着任してから日も浅かったのでそのパワハラ上司の言うままに発言をしていたようでした。

またあの上司と私とのやり取りを聞いていた後輩が、俺が帰った後にさすがにあれはひどいと上司に抗議したようでした。

私は地方公務員を退職したこと自体は全く後悔してないですし、辞めて正解だったなと今でも思っていますが、同僚たちと離れてしまったことについては少し寂しさを覚えています。

そんな中で、年末に元同僚たちと久々に食事に行くことになりました。いつまで相手をしてくれるかはわかりませんが、これからも彼らとの付き合いは大切にしていきたいと私ローンウルフは考えています。

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