後知恵バイアス ~過去を予測するのが上手い人たち~
お疲れ様です、ローンウルフです。
昨年のコロナショック時の株価急落からしばらくは鳴りを潜めていましたが、株価の回復に伴って最近再び
「〇〇を昨年の3月に買っていたら株価は〇〇倍になった!」
というような表現を見かけるようになりました。コロナショック前はAmazonやAppleの株価においてこのような表現をよく見かけましたね。
確かに事実だけ見ればそれはその通りかもしれません。しかしそれを実際に行うのはかなり難易度が高かったと思います。
AmazonはかつてITバブルで株価が95%下落した
現在から過去を眺めれば、Amazonはとてつもないリターンを上げています。
2006年末に投資していたら株価は40倍以上にもなった
しかしかつてAmazonはドットコムバブルの崩壊という強烈な株価下落劇を演じており、高値から最大95%も株価が下落していたのでした。
1999年に100ドルを超えていた株価は2年後には10ドル割れへと10分の1以下に激減した
その記憶から冷めやらぬ2000年代中ごろに、PERが50倍を超えるのが常態化して利益もわずかしか上げていなかったAmazonを長期で保有するというのはかなり難易度が高かったと思います。
また今でこそクラウド事業が成功してそのビジネスモデルが喧伝されるAmazonですが、当時は単なる手数料の高いネット上の本屋にすぎなかったわけですから、そうした銘柄を実際に保有し続けるのはとても難易度が高かったのです。実際に当時16ドルでAmazonを取得するも、半値の8ドルになって手放した方もいました。
また同じような例として、Appleについても「iphoneがブームになった時にappleの株を買ってれば高い投資リターンを得られた!」というような話を見たことがあります。
今から見るとその通りだ!と思ってしまうかもしれませんが、そのブームが長い間続くなんていうことは事前にわかるわけありませんし、iphoneが「BlackBerry」化することだって十分に考えられたわけです。
ちなみにBlackBerryとはiPhoneよりも前に登場していたスマートフォンで、あのオバマ大統領が使用していたことでも知られています。
かつてはスマートフォン市場で3分の1以上のシェアを占めていましたが、次第にAndroid端末とiPhoneに押され、ついに2020年をもって製造・販売が終了することとなったのです。
また冒頭で取り上げた「〇〇を昨年の3月に買っていたら株価は〇〇倍になった!」と主張していた人自身が昨年の3月に
「これからが暴落の本番かもしれないから少しでも現金の確保を!」
と主張していたわけですから、実際に実行することの難易度の高さが推し量れると思います。
後知恵バイアス~未来から過去を予測するのは簡単だ
このように未来から過去を振り返って「あの時あの株に投資していればとてつもないリターンを得られた!」ということは簡単ですが、実際にその当時にその銘柄に投資してなおかつ長期保有するということは言われるほど簡単ではないということがわかると思います。
このような現象について、ナシーム・ニコラス・タレブは著書「まぐれ」の中で、以下のように指摘しました。
事象が起きた後に得られた情報を、事象が起きたときにわかっていたはずだと考え、その結果、事象が起きた当時の情報を過大に見積もってしまうことを、心理学者たちは後知恵バイアスと呼ぶ。「最初からわかっていたよ」というやつだ。
あらかじめそのようなことがわかっていた人が大勢いればたくさんの成功者がいるとは思うのですが、実際にはそうした成功者はごく少数に限られています。
またその数少ない成功者の陰には、投資で失敗した多くの人がいます。我々は今現実に見えている結果だけに着目しがちで、消えていって見えなくなってしまった投資結果について目を向ける人は非常に少ないのです。
こうした「後知恵バイアス」について、さらにタレブはこう述べました。
後知恵バイアスにはもっと悪い効果がある。過去を予測するのがとてもうまい連中が、自分は将来を予測するのもうまいものだと勘違いして、自分の能力に自信を持ってしまうのだ。
過去のバックテストを重視しすぎた結果、それをそのまま未来に当てはめて成功が約束されたと勘違いしてしまい、過度にリスクをとってしまうという後知恵バイアスの負の側面をタレブは指摘したのです。
過去を無視することは出来ないが
とはいえ未来のことについて考えるうえで、過去の情報を無視することはできません。当然私自身も参考にしています。
しかし過去の結果に過度に信用をおいて投資行動に移ることは危険だと思いますし、ましてやここ数年の値動きだけで投資判断をするのは避けたほうがいいと思います。
昨年2020年のような相場を経験して、常に不測の事態が生じうるということを理解した人はとても多いと思います。
相場で長期的な成功を収めるためにも、目に見えない「違った未来」にも目を向けるべきではないかと私ローンウルフは考えています。
ディスカッション
コメント一覧
レバレッジ、信用取引、グロース株…
それを言うと、全て危ないと思います。
インデックス以外に「まぐれ」ではない投資とは何だと思いますか?
コメントありがとうございます。
タレブの著書名のせいで誤解されやすいんですが、私は投資の結果が全てまぐれだとは思っていません。もちろん運の要素もあるとは思いますが。
この記事内で一番主張したかったのが、本文内でも一番強調している「その当時にその銘柄に投資してなおかつ長期保有するということは言われるほど簡単ではない」ということです。未来から過去を語るのが一番簡単ですからね。ここ最近は下がれば戻る相場がずっと続いており、バックテストの結果が未来にもそのまま延長すると思っている人が多いのではないかと考えています。
なるほど…そういう意味ですか。
ありがとうございます。