悲観の極みで投資するのは難しいが楽観の極みを避けるのは比較的容易
お疲れ様です、ローンウルフです。
先日より、一度読んだことのあるローレン・C・テンプルトン、スコット・フィリップス著の「テンプルトン卿の流儀」を読み返し始めました。
ジョン・テンプルトンはバリュー投資で卓越した投資成績を残した著名な投資家で、高度成長期の日本にも投資をしていたことで知られています。
本を読み返していく中で、個人投資家の運用においても参考になる部分があるなと思い、その部分について今回の記事にしていきたいと思います。
悲観の極みは最高の買い時。だけど・・・
「テンプルトン卿の流儀」自体はテンプルトンの兄の孫娘とその夫が書いたものではありますが、本の最初にはジョン・テンプルトン本人による前書きがあります。
そしてその前書きの中で、テンプルトンはこのように述べています。
「他人が絶望して売っているときに買い、他人が貪欲に買っているときに売るには、最高の精神的強靭性が必要となるが、最終的には最高の報いが得られる」
「悲観の極みは最高の買い時であり、楽観の極みは最高の売り時である」
この「悲観の極み」で買いを入れるという事の有益性は広く知られているところであり、テンプルトン流のバリュー投資の根幹をなすものでもあります。
しかしテンプルトンも述べている通り、この悲観の極みの時に買いを入れることは非常に精神的な困難を伴います。
例えばリーマンショックが起きた時は大手金融機関が次々と破綻。次はどこだ?と誰もが疑心暗鬼に陥る中で株価も暴落。
NYダウは5000ドル台を割り込むといった悲観論や(リーマンショック前の高値は14000ドルを超えていました)、資本主義の終わりを囁くといった極論を唱える者まで出始めます。
そうした中で自分が保有している金融資産も暴落して多額の含み損を抱えてしまいます。試しに少額で買いを入れてみますが、すぐにその投資対象も含み損を抱えてしまいました。まさしく穴が開いたバケツに水を入れるがごとくです。
また2020年のコロナショックも皆さんの記憶に新しいところだと思います。当時の下落スピードはリーマンショック時を超え、3月16日にはS&P500はたった1日で12%近い下げとなり、ブラックマンデー以後で最大の下落率を記録しました。
当時はこの下げはまだ始まりに過ぎない、2番底がある、世界大恐慌の再来だという極めて悲観的な意見が飛び交っていました。このような状況の中で大胆な買いを入れることは、かなりの精神力を求められたと思います。
悲観の極みで買いを入れることは大きく儲けるために必要であるということは理屈の上ではわかっているのですが、実際にそれを実行するとなるととても難易度が高いというのは皆さんも身をもって実感していると思います。
「楽観の極み」で株式を売却するのも同じぐらい困難
テンプルトンの言葉の後段の「楽観の極みは最高の売り時」ということについても、悲観の極みで買いを入れるほどの難易度ではないものの、それに近いぐらい実行するのは難しいと思います。
株式市場が大きく上昇している中で自分が保有している銘柄を売却したとして、そこからさらに値上がりしてしまった場合には、周りの投資家が大きく儲けている中で自分だけが株価の上昇に乗れずに取り残されてしまうことになります。
人は他人が儲けている姿を見るだけの状態に耐えることが難しい生き物ですから、市場が上昇している時に売却を実行するのはとても精神的な困難を伴います。
多くの人は周りが大きく儲けているのに、自分は株式を売却して現金に換えたせいで儲けられないことをみじめに感じてしまうのです。きっと売却したことを後悔していることでしょう。
「楽観の極み」から距離を置くことは比較的容易
悲観の極みで買うことも楽観の極みで売ることも、それを実行できれば株式のパフォーマンスに好影響を与えますし、ぜひとも実行したほうがいい投資行動でしょう。
しかし先ほどから話している通り、それがいいとはわかっていながらも精神的な負担が大きいがために実行するのは困難を伴うと思います。
それでも我々個人投資家はテンプルトンの教えを少しでも活かせることが出来ないのでしょうか?
そう考えた時に、私は比較的容易にテンプルトンの教えを活かせる投資行動があるということに気付きました。それは「楽観の極みにある投資対象に近づかない」ということです。
価格が大きく上昇し、多くの人がその投資対象に極めて強気の意見を持った輝かしいストーリーに彩られた投資対象からは距離を置き、投資対象から除外することは一般の個人投資家にとってもそんなにハードルは高くないと思います。
またそうした投資対象を見つけることは、何もテンプルトンのような投資スキルの高い投資家でなくとも可能だと思います。例えば2021年のレバナス、今でいったら半導体・AI関連銘柄といったところですね。
ただ比較的容易とは言ったものの、それでも他人が大きく儲けているのを見て自分も思わず飛びつきたくなってしまうという人もいるかもしれません。
ですがそんな時は、このテンプルトンの教えを思い出して楽観の極みにある投資対象からは距離を置き、保守的な投資に徹することを心がけるべきではないかと私ローンウルフは考えています。